(2024ユーキャン速習レッスンP430、十訂基本テキスト下巻P483)
A 後期高齢者医療制度が創設された経緯とは
この経緯について、以下に詳しく見ていきます。
以前は、老人保健制度の医療等から給付されていた
以前は、75歳以上の高齢者と、障害の認定を受けた65歳以上75歳未満の高齢者に対する医療は、老人保健制度の医療等から給付されていました。この財源は、利用者負担額のほかは、医療保険者からの搬出金と公費となっていました。
そして、2006(平成18)年の医療制度改正により、老人保健法は廃止(全面改正)され、2008(平成20)年度からは「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく後期高齢者医療制度がスタートしました。ですので現在は、75歳以上の高齢者と、障害の認定を受けた65歳以上75歳未満の高齢者に対する医療は、後期高齢者医療制度によって提供されています(対象者は、老人保健制度の医療等と同じです)。
負担をみんなで分け合う仕組みに
老人保健から後期高齢者医療制度に移行した主な要因は、その財政面にあると言えます。後期高齢者医療制度の財源には「後期高齢者支援金(現役世代の保険料)」があり、後期高齢者の医療費の一部をもっと若くて現在働いている人(現役世代)も支払うことにして、負担をみんなで分け合う仕組みとなっています。これは老人保健にはなかった仕組みであり、このようにすることが後期高齢者医療制度の創設された大きな理由のひとつです
保険料の負担主体を明確に
老人保健の対象者は国民健康保険や健康保険などに加入し(それらの保険料を支払い)、そのうえで老人保健に加入する(老人保健には保険料はなし)という構造だったため、国民健康保険や健康保険などから老人保健にお金が出されていました(前述の「医療保険者からの拠出金」です)。ただ、この仕組みだと、老人保健の対象者が支払っている国民健康保険や健康保険の保険料が、老人保健においてどのように位置づけになるのかがあいまいになってしまいます。
後期高齢者医療制度は独立した保険制度であるため、加入する場合は国民健康保険や健康保険などからは脱退することになります。そして、加入すると後期高齢者医療制度の保険料を支払うことになります。こうすることで、保険料の負担主体が明確になります。
後期高齢者により適切な給付
給付の内容も、より後期高齢者に適切となるよう、後期高齢者医療制度において変更されています。
運営主体は都道府県にある後期高齢者医療広域連合となり、運営における責任が明確に
その他の大きな違いとしては、運営主体の違いがあげられます。老人保健の運営主体は市町村でしたが、後期高齢者医療制度の運営主体は都道府県にある後期高齢者医療広域連合となりました。前述のように、老人保健には保険料はなく、したがって運営主体である市町村はその徴収もしませんでした。にもかかわらず、市町村は運営主体として給付を行っていました。この仕組みだと、給付についての市町村の責任が不明確であったと言えます。
後期高齢者医療制度では、運営主体を都道府県にある後期高齢者医療広域連合とし、後期高齢者医療広域連合が保険料を徴収し、給付を行うことで、運営における責任が明確になります。また、運営を都道府県単位とすることで、市町村単位の場合よりも広い範囲で保険料の設定ができることになり、高齢者の負担における公平性が増していると言えます。