法定後見制度の後見類型、保佐類型、補助類型は、どのように分かれるのですか?

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(2024ユーキャン速習レッスンP447、九訂基本テキスト上巻P507~)

A 後見類型、保佐類型、補助類型は本人の判断能力によって分かれる

 法定後見制度は、本人の判断能力(事理を弁識する能力)の低下の程度により、次の3類型に分かれます。

法定後見制度の3類型
類型 対象者 判断能力
後見類型
(成年後見人の選任)
判断能力を欠く人(判断能力が全くない人) 低い

判断能力

高い
保佐類型
(保佐人の選任)
判断能力が著しく不十分な人
補助類型
(補助人の選任)
判断能力が不十分な人

代理権・取消権・同意権と3類型

 代理権・取消権・同意権は、それぞれ次のようなものです。

代理権・取消権・同意権
代理権
本人に代わって行うことができる権利。
 
例)認知症で判断能力が全くない人が施設に入る場合に、本人の代わりに成年後見人が(代理で)入所契約をする、など。
取消権
本人が行った行為でも、本人に不利益な場合には、取り消すことができる権利。
 
例)認知症で判断能力が衰えている人が、訪問販売で不必要な高額商品を買わされてしまった場合に(売買契約が成立してしまった場合に)、保佐人がその売買契約を取り消すことができる、など。
同意権
本人が行おうとしている行為について同意を与える権利。
 
例)認知症で判断能力が衰えているものの少しはある人が施設に入る場合に、契約するのは本人で、保佐人が契約内容を確認して、それに同意をした場合に契約が成立する、など。


 これらの権利のうち、法定後見制度の3類型における成年後見人などに与えられるのは、次のものになります。

法定後見制度の3類型と与えられる権利
類型 与えられる権利
後見類型 成年後見人に対して、次の権利が与えられる。

代理権
 成年被後見人(本人)の財産に関する法律行為(預金の管理、重要な財産の売買、入退院・施設入退所の手続きと費用の支払い、介護サービスの契約など)について、包括的な代理権が与えられる。
 ただし、本人の居住用の不動産(建物または敷地)を処分(売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定など)するには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

取消権
 本人の法律行為(預貯金の管理、重要な財産の売買など)に関し、本人にとって不利益なものについて取消権が与えられる(日用品の購入その他日常生活に関する行為を除く)。

※後見類型では、本人の判断能力が全くないので、成年後見人に与えられる代理権と取消権の及ぶ範囲が広い。
※成年後見人には、同意権は与えられない。後見類型の場合、本人の判断能力が全くなく、同意を与えたとしても、そのとおりに行為をする可能性が限りなく低いため、同意権は不要とされている。
保佐類型 保佐人に対して、次の権利が与えられる。

代理権
 被保佐人(本人)の同意のもと、保佐人などの請求により、家庭裁判所の審判を経て、特定の事項(預貯金の取引、社会保障給付の受領、家賃・公共料金の支払いなど)について代理権が与えられる。

取消権・同意権
 民法第13条で規定された重要な法律行為(金銭の借り入れ、重要な財産の処分、訴訟など)についてのみ、取消権と同意権が与えられる。

※保佐類型では、本人に少し判断能力が残っているので、後見類型よりも保佐人が代理権を持つことに対して厳しく、また、保佐人の取消権と同意権の及ぶ範囲が狭くなっている。
補助類型 補助人に対して、次の権利が与えられる。

代理権
 被補助人(本人)の同意のもと、補助人などの請求により、家庭裁判所の審判を経て、特定の事項(預貯金の取引、社会保障給付の受領、家賃・公共料金の支払いなど)について代理権が与えられる。

取消権・同意権
 本人の同意のもと、家庭裁判所の審判を経て、民法第13条で規定された重要な法律行為のうちの特定の行為についてのみ、取消権と同意権が与えられる(取消権と同意権の及ぶ範囲が、保佐人よりも限定されている)。

※補助類型では、本人にある程度の判断能力が残っているので、本人の同意が必要とされ、補助人が代理権、取消権、同意権を持つことに対してより厳しく、補助人の取消権と同意権の及ぶ範囲がより限定されている。
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