一次判定の「樹形モデル」「中間評価項目」とは、どいうものですか?

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(2024ユーキャン速習レッスンP59、十訂基本テキスト上巻P80~)

A 一次判定の「樹形モデル」「中間評価項目」とは

 一次判定では、次のようにして要介護認定等基準時間を算出し、それによって要介護状態等区分を判定します。

5分野の行為

 一次判定では、認定調査の基本調査の①~⑤の項目を、下表の5分野の行為に区分し、コンピュータで分析して要介護認定等基準時間を算出します。

 要介護認定等基準時間とは、1日あたりに必要となる介護時間の推計です。これは、実際の介護サービスや家庭での介護の時間を表すものではなく、介護の手間(介護の必要の程度)を判断する指標となるものです。

認定調査の基本調査の項目
身体機能・起居動作に関連する項目
生活機能に関連する項目
認知機能に関連する項目
精神・行動障害に関連する項目
社会生活への適応に関連する項目
特別な医療に関する項目
日常生活自立度に関連する項目
項目の詳細
概況調査の項目
Ⅰ 調査実施者(記入者)
実施日時、実施場所、記入者氏名・所属機関
Ⅱ 調査対象者
過去の認定(初回・2回め以降)、前回認定結果、対象者氏名・生年月日・住所、家族等連絡先など
Ⅲ 現在受けているサービスの状況・頻度
介護保険のサービス、介護保険給付外の在宅サービス、施設など
Ⅳ 調査対象者の家族状況、調査対象者の居住環境(外出が困難になるなど日常生活に支障となるような環境の有無)、日常的に使用する機器・器械の有無などについて特記すべき事項
 
基本調査の項目
1 身体機能・起居動作に関連する項目
1-1 麻痺等の有無 1-2 拘縮の有無 1-3 寝返り 1-4 起き上がり 1-5 座位保持 1-6 両足での立位保持 1-7 歩行 1-8 立ち上がり 1-9 片足での立位 1-10 洗身 1-11 つめ切り 1-12 視力 1-13 聴力
2 生活機能に関連する項目
2-1 移乗 2-2 移動 2-3 えん下 2-4 食事摂取 2-5 排尿 2-6 排便 2-7 口腔清潔 2-8 洗顔 2-9 整髪 2-10 上衣の着脱 2-11 ズボン等の着脱 2-12 外出頻度
3 認知機能に関連する項目
3-1 意思の伝達 3-2 毎日の日課を理解 3-3 生年月日や年齢を言う 3-4 短期記憶 3-5 自分の名前を言う 3-6 今の季節を理解する 3-7 場所の理解 3-8 徘徊 3-9 外出すると戻れない
4 精神・行動障害に関連する項目
4-1 被害的になる(物を盗られたなど) 4-2 作話 4-3 感情が不安定になる(泣いたり、笑ったりが不安定) 4-4 昼夜逆転がある 4-5 しつこく同じ話をする 4-6 大声を出す 4-7 介護に抵抗する 4-8 落ち着きがない(「家に帰る」と言うなど) 4-9 一人で外に出たがり目が離せない 4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくる 4-11 物を壊したり、衣類を破いたりする 4-12 ひどい物忘れ 4-13 意味もなく独り言や独り笑いをする 4-14 自分勝手に行動する 4-15 話がまとまらず、会話にならない
5 社会生活への適応に関連する項目
5-1 薬の内服 5-2 金銭の管理 5-3 日常の意思決定 5-4 集団への不適応 5-5 買い物 5-6 簡単な調理
6 特別な医療に関する項目
6 過去14日間に受けた特別な医療 【処置内容】 1.点滴の管理 2.中心静脈栄養 3.透析 4.ストーマ(人工肛門)の処置 5.酸素療法 6.レスピレーター(人工呼吸器) 7.気管切開の処置 8.疼痛の看護 9.経管栄養 【特別な対応】 10.モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等) 11.じょくそうの処置 【失禁への対応】 12.カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)
7 日常生活自立度に関連する項目
7-1 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度) 7-2 認知症高齢者の日常生活自立度
 
特記事項の項目
1 身体機能・起居動作に関連する項目についての特記事項
2 生活機能に関連する項目についての特記事項
3 認知機能に関連する項目についての特記事項
4 精神・行動障害に関連する項目についての特記事項
5 社会生活への適応に関連する項目についての特記事項
6 特別な医療に関する項目についての特記事項
7 日常生活自立度に関連する項目についての特記事項
5分野の行為
直接生活援助 ・食事
・排泄
・移動
・清潔保持
間接生活援助 洗濯、掃除等の家事援助など
認知症の行動・心理症状関連行為 徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末など
機能訓練関連行為 歩行訓練、日常生活訓練などの機能訓練
医療関連行為 輸液の管理、褥瘡の処置などの診療の補助

樹形モデル

樹形モデルの簡単なイメージ
図中の「〈食事摂取〉」が調査項目で、「(生活機能)」が中間評価項目
出典:www.mhlw.go.jp

 要介護認定等基準時間の算出は、行為ごとの樹形モデルによって行われます(上図の形からイメージして付けられた名称です)。

 樹形モデルは8つあります。これは、行為が8種類あるためです(上表の「直接生活援助」には「食事」、「排泄」、「移動」、「清潔保持」の4種類の行為があり、残りの4種類と合計して8種類です)。

 算出方法は、上図のように、基本調査の各項目と中間評価項目を選択肢として設定し、基本調査の結果に従って分岐させていって、1分間タイムスタディ・データの中からその被保険者の心身状態が最も近い高齢者のデータを選び出す、というものです。

 こうして算出された行為ごとの要介護認定等基準時間を合計し、さらに基本調査の「⑥ 特別な医療に関連する項目」がある場合は、そこから求められた時間も合計して、最終的な要介護認定等基準時間となります。

1分間タイムスタディ・データ
 介護老人福祉施設などの入所者約3,500人に対して、48時間にわたり、どのような介護サービスがどれ位の時間にわたって行われたかを調べたデータです。

基本調査の①~⑤の項目と5分野の行為
 1分間タイムスタディ・データの調査は、上表の5分野の行為ごとに実施されました。この項目を「同様の傾向をもつもの」という観点から並べ替えて、認定調査においてチェックしやすくしたのが基本調査の①~⑤の項目です(同じ項目で、区分の仕方が違っているだけ、ということ)。

 そして、認定調査を実施し、基本調査の①~⑤の項目を5分野の行為の区分に戻して樹形モデルで分析し、要介護認定等基準時間を推計します。

中間評価項目
 樹形モデルにある中間評価項目は、基本調査の①~⑤の項目になります。これは、特に問題がない場合は合計が100.0点で、介助が必要な場合には点数が減る、というものです。この点数によって、分岐していきます。

 つまり、行為ごとに樹形モデルを作成し、その中で基本調査の各項目は細かいレベルでの条件となり、中間評価項目は別の観点(「同様の傾向をもつもの」という観点)による大きなレベルでの条件になる、ということです。このように、異なる観点・レベルの条件を組み合わせることによって、樹形モデルの精度を向上させています。

要介護認定等基準時間と要介護状態区分等

 以上のようにして算出した要介護認定等基準時間により、下表の基準で要介護状態区分等を判定します。これが一次判定の結果になります。

要支援 要支援1 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満またはこれに相当する状態
要支援2 要支援状態の継続見込み期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減または悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態
要介護 要介護1 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態(要支援2に該当するものを除く)
要介護2 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満またはこれに相当する状態
要介護3 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満またはこれに相当する状態
要介護4 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満またはこれに相当する状態
要介護5 要介護認定等基準時間が110分以上またはこれに相当する状態

関連Q&A
法改正により、以前の「要介護1」を「要支援2」と「要介護1」の2つに分けて、もう1段階増やした  要支援2と要介護1の要介護認定等基準時間が同じなのには、法改正による要介護度等の変更と新たな予防給付の創設が関係しています。  以前は、要支援・要介護1~5の6段階でした。これが、2006年4月の法改正により、要支援1・2と要介護1~5の7段階に変更となりました。これは簡単に言うと、法改正前の要介護1を、介護を必要とする程度によって2つに分けて、「要支援、要介護1…」→「要支援1、要支援2、要介護1…」というように、もう1段階増やしたということです。  こうした経緯があるため、要支援2と要介護1は要介護認定等基準時間が同じで、要支援2の定義には「要支援状態の継続見込み期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減または悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ」という内容が追加になっています。  そして、この法改正により、要支援1と2の人に対しては、予防により重点を置いた「予防給付」が提供されることとなりました。
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