高額介護サービス費は、支給限度基準額を超えた分にも適用されますか?

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(2025ユーキャン速習レッスンP70、十訂基本テキスト上巻P108)

A 支給限度基準額を超えた分は、高額介護サービス費の対象外

 支給限度基準額を超えて全額が利用者負担となった分は、高額介護サービス費の対象外とされています。もし、その分が高額介護サービス費として償還払いで給付されたら、支給限度基準額の意味がなくなってしまいます。

高額介護サービス費は、支給限度基準額の範囲内の利用であっても給付されることがある

 高額介護サービス費とは、利用者が支払った自己負担額(原則1割)が、定められた上限額(この記事の最後の表参照)を超えた場合に、超えた分が払い戻される、というものです。そして、支給限度基準額の範囲内の利用であっても、高額介護サービス費が給付されることはあります。簡単な例をあげてみます。

例)夫婦が2人で暮らしていて、2人とも利用者負担は1割で、要介護5(区分支給限度基準額は36,217単位)です。1単位あたりの単価は10円、高額介護サービス費の上限は世帯で44,400円です。
 ある月に、夫は30,000単位分のサービスを利用して、サービス費用は30,000単位×10円=30万円、利用者負担額は3万円でした。
 同月に、妻は20,000単位分のサービスを利用して、サービス費用は20,000単位×10円=20万円、利用者負担額は2万円でした。
 夫婦ともに、区分支給限度基準額の範囲内の利用です。
 すると、この月の世帯の負担額は、夫と妻の利用者負担額の合計5万円となります。この5万円は、高額介護サービス費の世帯の上限である44,400円を超えているので、超えた分の5,600円が高額介護サービス費として払い戻されます。

 この例のように一つの世帯に要介護者が何人もいる場合は、世帯としての利用者負担が大きくなって、その世帯の家計が苦しくなってしまいます。それを軽減するために高額介護サービス費が給付されます。

高額介護サービス費・高額介護予防サービス費の所得区分ごとの負担上限額

 これは、次のようになっています。

高額介護サービス費・高額介護予防サービス費の所得区分ごとの上限額
所得区分 上限額(月額)
課税所得約690万円以上
(年収約1,160万円以上)
世帯 140,100円
課税所得約380万円以上約690万円未満
(年収約770万円以上約1,160万円未満)
世帯 93,000円
課税所得約145万円以上約380万円未満
(年収約383万円以上約770万円未満)
世帯 44,400円
・市町村民税世帯非課税で、公的年金等収入と所得額の合計が80.9万円を超える人
世帯 24,600円
・市町村民税世帯非課税で、公的年金等収入と所得額の合計が80.9万円以下の人
・市町村民税世帯非課税の、老齢福祉年金受給者
世帯 24,600円
個人 15,000円
・生活保護受給者等
個人 15,000円
※老齢福祉年金とは、国民年金発足当時すでに高齢になっていたため、老齢年金の受給資格がない人に対して支給される年金のこと。これを受け取っている人が、老齢福祉年金受給者。

関連Q&A
高額介護サービス費の現物給付化が行われる  生活保護受給者に対して、高額介護サービス費が直接的に給付されることはありません。高額介護サービス費との関係は、次のようになります。  生活保護受給者が介護サービスを利用して、その費用の1割が高額介護サービス費の上限額を超えた場合、その超えた分については、国保連において保険請求分への振り替え処理が行われます。簡単な例をあげて考えてみます。 例)生活保護受給者が、A事業者の介護サービスを20万円分利用しました。この場合、9割である18万円が介護保険から給付され、2万円が生活保護の介護扶助から給付されます。  これについて、A事業者は国保連に請求します。この請求書では、介護保険への請求(市町村への請求)は18万円、生活保護の介護扶助への請求(福祉事務所への請求)は2万円です。国保連は、A事業者に20万円を支払います。  そして、この2万円は、生活保護受給者の高額介護サービス費の上限額1万5,000円を超えています。超えた分である5,000円について、国保連は介護保険への請求に振り替えます。ですので、国保連は市町村に18万5,000円を請求して、福祉事務所へ1万5,000円を請求することになります。生活保護受給者への高額介護サービス費の支給はありません。  ただ、上記の振り替え処理によって、高額介護サービス費の上限額を超えた分は、生活保護受給者へのサービス費用になっていることになります。ですので、この処理を「高額介護サービス費の現物給付化」という言い方をします。
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