福祉サービス一覧

後期高齢者医療制度が創設されたのには、どのような経緯があるのですか?

<h3>負担をみんなで分け合う仕組みに</h3>  老人保健から後期高齢者医療制度に移行した主な要因は、その財政面にあると言えます。後期高齢者医療制度の財源には「後期高齢者支援金(現役世代の保険料)」があり、後期高齢者の医療費の一部をもっと若くて現在働いている人(現役世代)も支払うことにして、負担をみんなで分け合う仕組みとなっています。これは老人保健にはなかった仕組みであり、このようにすることが後期高齢者医療制度の創設された大きな理由のひとつです &nbsp; <h3>保険料の負担主体を明確に</h3>  老人保健の対象者は国民健康保険や健康保険などに加入し(それらの保険料を支払い)、そのうえで老人保健に加入する(老人保健には保険料はなし)という構造だったため、国民健康保険や健康保険などから老人保健にお金が出されていました(前述の「医療保険者からの拠出金」です)。ただ、この仕組みだと、老人保健の対象者が支払っている国民健康保険や健康保険の保険料が、老人保健においてどのように位置づけになるのかがあいまいになってしまいます。  後期高齢者医療制度は独立した保険制度であるため、加入する場合は国民健康保険や健康保険などからは脱退することになります。そして、加入すると後期高齢者医療制度の保険料を支払うことになります。こうすることで、保険料の負担主体が明確になります。 &nbsp; <h3>後期高齢者により適切な給付</h3>  給付の内容も、より後期高齢者に適切となるよう、後期高齢者医療制度において改変されています。 &nbsp; <h3>運営主体は都道府県にある後期高齢者医療広域連合となり、運営における責任が明確に</h3>  その他の大きな違いとしては、運営主体の違いがあげられます。老人保健の運営主体は市町村でしたが、後期高齢者医療制度の運営主体は都道府県にある後期高齢者医療広域連合となりました。前述のように、老人保健には保険料はなく、したがって運営主体である市町村はその徴収もしませんでした。にもかかわらず、市町村は運営主体として給付を行っていました。この仕組みだと、給付についての市町村の責任が不明確であったと言えます。  後期高齢者医療制度では、運営主体を都道府県にある後期高齢者医療広域連合とし、後期高齢者医療広域連合が保険料を徴収し、給付を行うことで、運営における責任が明確になります。また、運営を都道府県単位とすることで、市町村単位の場合よりも広い範囲で保険料の設定ができることになり、高齢者の負担における公平性が増していると言えます。

禁治産・準禁治産制度とは、どういうものだったのですか?

 禁治産・準禁治産制度は、成年後見制度の以前にあった、古い(前時代的な)制度です。  「禁治産」という言葉には、「自分の財産を管理・処分することを禁じられること」という意味があります(「財産の管理(治めること)を禁止する」ということです)。  そして、禁治産制度とは、簡単に言うと「精神疾患などで心神喪失者となった人の権利を制限して、別の人に管理させる」という主旨の制度です。心神喪失者であるとされた場合、自由に買い物ができない、心神喪失者であると戸籍に記載される、といった問題がありました。  準禁治産制度は、心神耗弱者(心神喪失ほどではないが、正常な判断能力を欠く者)に対する同様の制度です。  つまり、これらは精神障害者の“権利を制限”する、ネガティブな制度ということです。  こうした問題を踏まえて、改善して始まったのが<span class="bold">成年後見制度</span>です。成年後見制度では、上記のような問題はなくなっており、「<span class="bold">判断能力に障害がある人の権利を守る</span>」という主旨で、ポジティブな制度となっています。

法定後見制度の後見類型、保佐類型、補助類型は、どのように分かれるのですか?

後見類型、保佐類型、補助類型は本人の判断能力によって分かれる  本人の判断能力(事理を弁識する能力)によって分かれており、判断能力を欠く人(=判断能力が全くない人)に対応するのが「後見類型」、判断能力が著しく不十分な人に対応するのが「保佐類型」、判断能力が不十分な人に対応するのが「補助類型」です。 <table> <caption>法定後見制度の3類型</caption> <tr> <th>類型</th> <th>対象者</th> <th>判断能力</th> </tr> <tr> <td class="t-style1">後見類型 (成年後見人の選任)</td> <td>判断能力を欠く人</td> <td rowspan="3" align="center">低い ↑ 判断能力 ↓ 高い</td> </tr> <tr> <td class="t-style1">保佐類型 (保佐人の選任)</td> <td>判断能力が著しく不十分な人</td> </tr> <tr> <td class="t-style1">補助類型 (補助人の選任)</td> <td>判断能力が不十分な人</td> </tr> </table> <div class="indent">※用語</div> <div class="indentmaru2"><span class="maru">●</span>代理権……本人に代わって行うことができる権利。</div> <div class="indentmaru2"><span class="maru">●</span>取消権……本人が行った行為でも、本人に不利益な場合には、取り消すことができる権利。</div> <div class="indentmaru2"><span class="maru">●</span>同意権……本人が行おうとしている行為について同意を与える権利。</div> <br> <div class="sanshyo"><span class="sankaku">▼</span>関連Q&A</div> <a href="https://caremane.site/3070">https://caremane.site/3070</a> &nbsp; <h3>後見類型</h3> <br> <h4>代理権</h4>  成年後見人に、本人の財産に関する法律行為(預金の管理、重要な財産の売買、入退院・施設入退所の手続きと費用の支払い、介護サービスの契約など)について包括的な代理権が与えられます。  ただし、本人の居住用の建物または敷地を処分(売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定など)するには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。 &nbsp; <h4>取消権</h4>  成年後見人に、本人が行った行為について取消権が与えられます(日常生活に関する行為を除く)。  後見類型では、本人の判断能力が全くないので、成年後見人に与えられる代理権と取消権の及ぶ範囲が広くなっています。 <div class="indent">※成年後見人には、同意権は与えられません。後見類型の場合、本人の判断能力が全くなく、同意を与えたとしても、そのとおりに行為をする可能性が限りなく低いため、同意権は不要とされています。</div> &nbsp; <h3>保佐類型</h3> <br> <h4>代理権</h4>  本人の同意のもと、保佐人などの請求により、家庭裁判所の審判を経て、保佐人に特定の事項(預貯金の取引、社会保障給付の受領、家賃・公共料金の支払いなど)について代理権が与えられます。 &nbsp; <h4>取消権・同意権</h4>  保佐人に、民法第13条で規定された重要な法律行為(金銭の借り入れ、重要な財産の処分、訴訟など)についてのみ、取消権と同意権が与えられます。  保佐類型では、本人に少し判断能力が残っているので、後見類型よりも保佐人が代理権を持つことに対して厳しく、保佐人の取消権と同意権の及ぶ範囲が狭くなっています。 &nbsp; <h3>補助類型</h3> <br> <h4>代理権</h4>  本人の同意のもと、補助人などの請求により、家庭裁判所の審判を経て、補助人に特定の事項(預貯金の取引、社会保障給付の受領、家賃・公共料金の支払いなど)について代理権が与えられます。 &nbsp; <h4>取消権・同意権</h4>  本人の同意のもと、家庭裁判所の審判を経て、補助人に民法第13条で規定された重要な法律行為のうちの特定の行為についてのみ、取消権と同意権が与えられます(取消権と同意権の及ぶ範囲が、保佐人よりも限定されています)。  補助類型では、本人にある程度の判断能力が残っているので、本人の同意が必要とされ、補助人が代理権、取消権、同意権を持つことに対してより厳しく、補助人の取消権と同意権の及ぶ範囲がより限定されています。 &nbsp; <h3>まとめ</h3> <table> <caption>法定後見制度の3類型と与えられる権利</caption> <col width="120"> <tr> <th>類型</th> <th>与えられる権利</th> </tr> <tr> <td class="t-style1">後見類型 <span style="font-weight: normal;">成年後見人に対して</span></td> <td><div class="indent">・代理権(包括的なもの。ただし、本人の居住用の不動産を処分するには、家庭裁判所の許可が必要)</div> <div class="indent">・取消権(日常生活に関する行為を除く)</div> <div class="indent">※同意権は与えられない。</div> </td> <tr> <td class="t-style1">保佐類型 <span style="font-weight: normal;">保佐人に対して</span></td> <td><div class="indent">・代理権(本人の同意のもと、保佐人などの請求により、家庭裁判所の審判を経て、特定の事項について)</div> <div class="indent">・取消権(重要な法律行為についてのみ)</div> <div class="indent">・同意権(同上)</div></td> </tr> <tr> <td class="t-style1">補助類型 <span style="font-weight: normal;">補助人に対して</span></td> <td><div class="indent">・代理権(本人の同意のもと、補助人などの請求により、家庭裁判所の審判を経て、特定の事項について)</div> <div class="indent">・取消権(本人の同意のもと、家庭裁判所の審判を経て、重要な法律行為のうちの特定のものについてのみ)</div> <div class="indent">・同意権(同上)</td> </tr> </table>

成年後見制度と日常生活自立支援事業は、どのように違うのですか?

<h2>成年後見制度と日常生活自立支援事業は、対象者と実施する内容が異なる</h2>  次のように、対象者と実施する内容が異なります。 &nbsp; <h3>成年後見制度の対象者と実施内容</h3> <br> <h4>対象者は、判断能力の低下が一定以上の人</h4>  成年後見制度の対象となるのは、判断能力の低下が一定以上の人です。 &nbsp; <h4>実施する内容は、法律行為についての対象者の保護と権利擁護</h4>  成年後見制度では、身上監護や財産管理に関する法律行為について、成年後見人などに代理権、取消権、同意権が与えられ、対象者を保護し、その権利を守ります。これらの権利は、本人に代わって契約をしたり、本人が交わした契約を破棄できるなど、かなり強い権限であると言えます。 &nbsp; <h3>日常生活自立支援事業の対象者と実施内容</h3> <br> <h4>対象者は、断能力の低下が軽い人</h4>  成年後見制度の対象となる人より、判断能力の低下がもっと軽い人が日常生活自立支援事業の対象となります。 &nbsp; <h4>実施する内容は、日常生活に関する援助</h4>  日常生活自立支援事業では、日常生活に関する援助(福祉サービスの利用援助、日常的な金銭等の管理、書類などの預かりサービス)を行います。これは、あくまで日常生活を送るうえで必要な援助であり、生活支援員に成年後見制度のような権限は与えられません。 &nbsp; <h3>まとめ:成年後見制度は扱う事柄が重大で、日常生活自立支援事業は日常生活に密着している</h3>  こうして比較すると、成年後見制度の方が扱う事柄が重大で、日常生活自立支援事業の方は日常生活に密着している、と言えます。

トップへ戻る